システムを入れ替えずに、福祉情報の連携を実現

福祉CS| 狭山市様 導入事例

縦割りを解決したいという熱意と「連携のために、安定稼働の使い慣れたシステムを捨てたくない」という現場のニーズから、 独自の仕組みを構築することを決断したその経緯と効果についてお話しを伺いました。

2014年12月インタビュー

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「縦割りを解決したい」現場の声から生まれた仕組み

狭山市様の福祉保健部門では、組織や制度の枠組みを超えた支援体制について、平成23年から作業部会を立ち上げて、具体的な検討をおこなっていました。
福祉を取り巻く状況について粕谷様は、「急速に進む少子高齢化や、生活環境、労働環境、家族形態の変化など、福祉健康に関する市民の相談ニーズは年々多様化しており、将来的にはより多岐にわたっていくことが想定される状況にあります」とご説明くださいました。
当時障害者福祉課主幹として福祉サービスを担当していた宮崎様は、システム化に至る経緯について、「ITや組織体制による支えが必要だった。福祉部門の情報が持つ潜在的な価値に気づき、それを集約することに立ち向かった職員や、各々が持っている知識やノウハウを集める必要性を感じた職員がいた。また同じ時期に作業部会で検討した課題が、それらとシンクロするなど色々なことが重なってできたこと」とお話しくださいました。

休日だけではない 情報が断片化する時間

各部門のケースワーカ職員は担当住民の状況を正確に把握しています。
また職員同士のコミュニケーションにより制度や部門を越えた情報共有が行われています。どこに課題があったのでしょうか。
中原様は、「金曜日の夕方は相談や通報の電話が増えます。休み前に伝えたいという思いなのでしょう。業務終了の時間になり、職員が次第に帰っていくと、今まで連携していた情報も徐々に断片的になってしまいます。曜日や時間に関わらず蓄積された情報が活用できるかどうかが重要です」とご説明くださいました。
福祉の総合窓口化について宮崎様は、「総合窓口はワンストップの1つにすぎません。電話ならばコールセンターですし、WebならFAQでしょう。総合窓口はそのうちの1つです。しかし、多くの総合窓口システムで福祉部門は蚊帳の外です。制度も仕組みも多岐にわたり、手続きも煩雑なことがその理由です。相談は人が行うものですから、そもそもIT化は馴染まないという意識も阻害要因ですね」と分析されています。また、「ワンストップサービスは電子自治体が語られはじめた当初からの課題でした。実現には情報連携が必要です。これを福祉分野で実現するには、総合システム化しかないというのがこれまでの常識でした。できない理由をいくら並べても何も生まれないのだから、知恵を絞ることが重要なのです」とお話しくださいました。

住民の4割は、福祉部門となんらかの関わりがあった

準備段階のできごとについて中原様は、「登載人数の試算は意外な結果でした。情報の集約は、住民の40%がなんらかの形で福祉部門と関わりがあることを教えてくれました。福祉は歳出の多くを占めていますから、容易に全容を掴めることも、このシステムの強みの一つになるなと思いました」と振り返られます。
岩渕様は、「ご自身の状況を言えない方も多くいらっしゃいます。これまでは関わりがありそうな職員に聞いて回っていたため、確認のためにお待たせすることもありました」とこれまでの状況をご説明くださいました。また、「福祉CSの稼働後は、ご本人の状況を早く正確に把握できるようになりました。まだ福祉CSが無い時の手法で実務に携わっている部分もあるので、使い方次第では、もっと効率が良くなる可能性があると思います」とおっしゃっていただきました。

今使っているシステムそのままに福祉情報を一元化する

福祉コミュニケーションサーバは、住民記録、介護認定、障がい者福祉サービス、児童手当を始めとする20以上の事業が連携しています。しかも、個別業務システムには『個人を識別するキーを含めたCSV形式のファイルを出力する』という要求のみで連携を実現しています。このシンプルさこそが、低コストでありながら、無限の可能性をもたらしている要因の一つです。
この点について東保様は「私が理想としているあり方です。これをスタンダードにするべき。これまでも情報連携の仕組みは存在していましたが、莫大な費用が必要でした。福祉分野では個々のシステムにそれぞれ特徴があって、福祉総合システムに入れ替えたところで、それが現場に合うとは限りません。使いやすいシステムを使い続けることが可能であれば、連携を目的に無理やり新しいシステムを選定するべきではありません」とおっしゃっていただきました。

効果は他部署との連携だけではない。共有、検索、活用ができてこそ「情報」

  • 効果は他部署との連携だけではない。共有、検索、活用ができてこそ「情報」

導入後に予想外の効果もあったそうです。粕谷様は、「こども課では、児童手当、こども医療、児童扶養手当、ひとり親医療で個別業務システムを使用しています。これまで受給状況知るためには、4システムにそれぞれログインする必要がありました。今では福祉CSでこども課所管の情報が一画面で把握できるようになりました。他部署との連携のみでなく、この点も負担軽減つながるメリットです」とお話しくださいました。「共有、検索、活用ができてこそ情報といえる。連携して活用ができれば、福祉の情報は宝の山となる。他の分野でもこの手法で開ける扉はあるはず」と宮崎様はおっしゃいます。今後は、防災分野での活用のほか、総合窓口システムと連携により更なる住民サービスの向上を計画しています。これからの展望について粕谷様は「今は福祉を中心に活用しているが、狭山市全体に広げ、市民サービスにつなげたい」とお話しくださいました。日本情報システムは、今後も狭山市様と協力し、パッケージの販売・保守をとおして、福祉行政への貢献に努めてまいります。

福祉コミュニケーションサーバ(福祉CS)について

自治体が住民一人ひとりとどのように関わっているか、制度の枠をこえて横断的に照会できる仕組みを実現します。「生活の変化(ライフイベント)と制度ごとに、手続きの必要性を登録できる」「ファイルや写真、メッセージなどの電子データを住民単位で登録できる」といった機能があります。進達、決定、帳票出力といった事務に関連する機能はありません。連携し共有することに特化したシステムです。オプションとして、相談通報の記録、防災への活用を目的とした機能を追加することができます。

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