長谷川様:例えば、ひとり親が就労に必要な資格取得のために就学が決まったという時、ご自身が何を必要としているのか何に困っているのか気づいていないケースも多いのです。こどもの預け先を決めることを忘れてしまっていることもよくあります。データを集め必要な支援を把握、このケースでは保育支援をこちらから案内する必要があります。多くの場合、時間が限定されていますから即時性も課題でした。
導入事例
導入事例
長谷川様:ひとり親の方が最初にいらっしゃるのは、私たちの児童相談窓口です。職員は、漏れなく支援を届けるために相談者の現況を正確に把握しなければなりません。こどもの所属する学校、生活保護の受給状況、障がいや介護の情報などです。相談者に質問をして確認していくのも困難で、以前は庁内関係部署へ電話し情報を集める必要がありました。
亀田様:1件の相談につき、最低でも3部署には電話をしていました。もちろんそれ以上の部署へ問い合わせることもあります。1日に何件も相談はありますからその度に電話です。相手が電話中で掛け直すこともありますし、膨大な時間を要します。また問い合わせ先の部署からすると割り込みや調べ物の追加になるのでお互いに負担が大きかったです。
長谷川様:例えば、ひとり親が就労に必要な資格取得のために就学が決まったという時、ご自身が何を必要としているのか何に困っているのか気づいていないケースも多いのです。こどもの預け先を決めることを忘れてしまっていることもよくあります。データを集め必要な支援を把握、このケースでは保育支援をこちらから案内する必要があります。多くの場合、時間が限定されていますから即時性も課題でした。
長谷川様:福祉CSはこの課題を解決するために導入しました。現在は、学校の所属、障がい福祉、生活保護のデータと連携しているので、窓口で相談者の情報を入力すれば即時に画面で閲覧できるようになりなりました。これまでのように電話で関係部署の業務を圧迫することなく、スムーズな支援が可能になったのです。
「障害者手帳を持っていますか?」と聞き取りから話を始めるのと、持っていることを把握した上でもう1歩踏み込んで支援のための話をするのとは全く違います。
亀田様:もう既に福祉CSというのは「あるのがあたりまえ、なくてはならないもの」になっています。なくなってしまったら本当に困る、もう導入前には戻れません。
長谷川様:皆のパソコンのタスクバーにピン留めしてすぐ開けるようになっています。毎日頻繁に使いますからね。
長谷川様:福祉CSには非常に厳しく個人情報を守る工夫を入れてもらいました。連携データには個人情報が含まれていますから、利用目的が適切かどうかを確認するワーニングを毎回表示しています。細かく職員単位で閲覧などの権限設定も行っています。これは利用する職員への意識付けを明確にすることと、データの提供側への安心を担保する意図もあります。
長谷川様:こどもに関わる事案で警察や児童相談所から通報があります。要請に応じて個人情報を提供することは児童福祉法で認められています。通報の電話を受けた時にも福祉CSで閲覧すれば短時間で必要な情報を把握することができ、即時の回答が可能です。この時も画面に適正利用を確認するワーニングが出ますから個人情報をしっかり守りながら、緊急な要請へ素早く対応ができるのです。
八田様:私は、基幹システム側にある関連データを福祉CSに渡すための調整を行いました。具体的には、障がい福祉、高齢者、所属(学校)、就学援助、介護、妊婦情報等のシステムのデータです。csvファイル(カンマ区切りのテキストデータ)を出力して、それを福祉CSで取り込むのですが、システムが多様で改修するとなると各ベンダーへ依頼する必要がありました。費用は数十万円〜数千万円と高額で現実的ではありません。各部署にも開発の期間、負担をかけることになります。
そこで既に導入済みだったRPA(ロボティックプロセスオートメーション)を活用することにしたのです。各システムでは特定のフォルダへcsvを出力するように手順を登録するだけです。開発費はゼロですし、自動的に毎晩処理が実行されます。今後連携元システムの仕様変更があっても手順の登録をし直すだけですから容易に、コストをかけずに対応できます。
八田様:国は自治体システムの標準化を進めていますから、今後は基幹側のシステムも変わることになると思います。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)が規格化されれば福祉CS側ももちろん対応されるでしょうし、過渡期の変化にもRPAで柔軟に対応できます。
もう一点、柔軟性という意味では福祉CS側の画面の変更がとても便利です。連携データを取り込んで福祉CSに表示する項目はノーコードで簡単に追加や変更ができるので重宝しています。
実際に、私が依頼されて項目を追加した際には1時間もかからず完了しました。
今後、さらに連携するデータを追加し展開する際も、コストをかけずに柔軟に拡張できるのは非常に有効だと思います。
長谷川様:市役所の縦割りのシステムに『横串』を入れるのはとても難しいことでしたが、福祉CSで実現できたのは非常に大きなことだったと感じています。大型のパッケージでは関係各署の調整、お膳立てなど時間もコストも大きく困難です。福祉CSのシンプルさ、柔軟さ、できるところから始められるという点がやりやすかったのかなと思います。今回、入間市ではひとり親のワンストップ支援で活用しています。他自治体でもさまざまなデータを集約して『横串』を入れるという必要性があるのではないでしょうか。
亀田様:これまではひとり親の方が相談に来られた際に、漏れなく適切でスムーズな支援をすることを追求してきました。福祉CSでデータを見られるので背景にある家庭の状況と当日の応対の様子とを複合的に、長期的に見ていけたらと考えています。もちろん先入観を持つべきではありません。ただ隠れているハイリスク児、ヤングケアラーといった問題を救済できるように1つの情報として能動的に活用していきたいと思います。
長谷川様:生活のしづらさというのは、一つの原因によるものではなく、複数の課題が複合的に存在して発生していることも多くあります。加えて、生活の単位である世帯の構成員、つまり家族に原因があったり、それらが積み重なったりして苦しくなっていることがあります。目の前で訴えていることに対応すれば解決するとは限りません。個人まるごと、世帯まるごとで支援する必要があります。そのためには経験に頼るだけでなく、データをつないで漏れなく困りごとの原因や状況を把握することはとても重要で、福祉CSがそのサポートをしてくれるので、一層寄り添った支援が可能になると思います。
八田様:福祉CSはひとり親支援のために厚労省からの補助金を受けて導入しました。このことから、システムの利用範囲には制限があり、現状ではひとり親支援のためにしか利用できず、歯がゆい思いをしています。
福祉CSはその性質上、利用する課や連携するデータを選ばないシステムであることから、庁内の様々なデータを福祉CSで連携することで、各課の持つ情報が必要な課でスムーズに利用でき、市民にとっても職員にとっても大きなメリットが生まれます。
入間市では現在、市内9ヶ所の地区センターで、支所機能や福祉相談窓口機能などを設けており、これらの施設においても福祉CSを展開できるようになれば、より手厚い支援が可能になります。将来的に補助金の制約がなくなり、市役所全体に展開できるようになることを期待しています。